ストレッチで伸ばし続ける最適な時間は?
こんにちは
本日はストレッチの時間はどのくらいすれば効果が出るの?と言う疑問にお答えしたいと思います。
- はじめに
- 静的ストレッチ(スタティックストレッチ)
- 伸長反射?
- 筋紡錘とは
- 腱紡錘(ゴルジ腱器官)とは
- まとめ
はじめに
まず、ストレッチにはご存知の通り血行促進や老廃物を流す作用、筋肉の緊張の緩和、柔軟性の向上、可動域の拡大などいろいろな効果があり、日常生活はもちろんスポーツの時にも欠かせないケガやスポーツ障害の予防に欠かすことのできない重要な体操です。
当院では心地よいくらいの強さで深呼吸をゆっくりし、リラックスしながら行う安全な静的ストレッチ(スタティックストレッチ)と呼ばれるストレッチを日常生活やスポーツのウォーミングアップ前に習慣的に行ってもらう事を推奨しています。
静的ストレッチ(スタティックストレッチ)
静的ストレッチ(スタティックストレッチ)とは、反動や弾みをつけずに筋肉をゆっくり伸ばしていき、その伸ばした状態をキープすることで筋肉を緩める一般的なストレッチのことを言います。
ストレッチの時、反動や弾みをつけたり短時間のストレッチではなぜ筋肉が緩みにくいかと言うと、体には伸長反射と言われる無意識に起こる防御反応が存在するからです。
伸長反射?
ストレッチングにおいて伸張反射とは、反動や弾みをつけて筋肉が急に引き伸ばされた時、それ以上筋肉の繊維が引っ張られて切れたりダメージを負わないように、その筋肉を急いで縮ませて硬くし保護しようとして無意識に起こる反射のことで、結果的に伸長反射が起こるとストレッチ前より筋肉が硬くなり逆効果になってしまいます。
伸張反射は骨格筋内に存在する筋紡錘の一次終末が起源となって生じる脊髄反射です。図1を見ながら、その反射弓を追ってみましょう。
骨格筋が伸張されると、筋紡錘に一次終末を作るIa群求心性線維が興奮し、上行したインパルスは後根を通って脊髄に至り、主に筋紡錘が存在する筋を支配する運動ニューロンを単シナプス性に興奮させ、筋が収縮します。
参照:POST ストレッチ などで生じる【伸長反射】はなぜ随意運動の邪魔をしないのか?・健康科学大学・松村憲先生
そのため、筋の柔軟性を高める目的として行なうスタティックストレッチングのやり方として「反動をつけずゆっくり伸ばす」と説明するのです。
伸長反射が起きるメカニズムを詳しく見ていくと、上記の様に筋肉の中に存在する「筋紡錘」と言う感覚受容器の働きで深く関係しています。
筋紡錘とは
筋紡錘は、筋線維と平行に並んで普通の筋繊維よりも細く短いものがあり、これらが数本まとまって筋肉の末端から中央部に存在し、ストレッチされると筋肉と一緒に伸ばされ、筋肉内に散在する筋組織の長さや張力を感知する固有受容器で、機能は筋線維が過度に伸張するのを防ぐことです。
筋紡錘内にある筋線維を錘内筋線維と呼び、筋紡錘外の直接筋力発揮に関する筋線維を特に錘外筋線維と呼ぶことがあり、筋紡錘の中には感覚神経の端末が存在し筋の内部に発生する張力などを感知します。
錘内筋線維はγ運動ニューロンの支配を受けα運動ニューロンは基本的に脊髄からのインパルスを錘外筋線維へ伝え、動きを起こす役割をもちますがγ運動ニューロンは錘内筋線維の収縮をコントロールし、筋長の変化に対する筋紡錘の感度を調節します。
筋が急激に収縮し、筋に張力が発生すると筋紡錘が伸張され、この時に張力が長さの形で感知され、中枢神経系にインパルスが戻されます。求心性神経はα運動ニューロンとγ運動ニューロンの両方にシナプス結合するので、これによって錘外筋線維と錘内筋線維の両方の収縮が起き一種の防御反応で筋肉が硬くなってしまいます。
また逆の作用として伸長反射を抑制するのに重要な感覚器官に「腱紡錘(ゴルジ腱器官)」が存在します。
腱紡錘(ゴルジ腱器官)とは
骨格筋の両端は腱で骨に付着していて、ゴルジ腱器官(腱紡錘)は筋と腱の接合部分、あるいは靭帯や関節そのものの中にあり腱に対して垂直に配列されています。筋肉が強く伸ばされているとき、筋肉が強く縮んでいるときの両方で働きます。
このゴルジ腱器官(腱紡錘)の機能は腱にかかる張力を感知することで、大きな張力を感じると運動神経を抑制させ、筋肉を緩め、脱力反応を引き起こし反射抑制をさせます。
筋に非常に高い張力が発生するとそのストレスにより腱が伸長され、ゴルジ腱器官が活動して脊髄に信号をフィードバックし、錘外筋線維を支配するα運動ニューロンの活動を抑制して筋の張力を減少させようとします。
過度の張力が筋内に発生すると障害の危険があるので逆に緩ますような信号を出します。これも一種の防御反応で伸ばされていた筋肉が緩み始めます。
この機能利用して、これ以上筋肉が伸ばされ続けると筋肉の繊維や腱を痛めてしまうからこの伸ばされて硬くなっている筋肉を緩めて、と言う信号を出させるまでゆっくり伸ばす事がストレッチを行う際とても重要になってきます。
まとめ
ストレッチを行う際は、いかに筋紡錘の働きを抑え、伸長反射を起こさないようにすることが重要か。反動や弾みをつけずに行って下さいと言う意味がお分かりいただけたかと思います。
また、ゴルジ器官(腱紡錘)の働きを利用してゆっくり時間をかけて伸ばしていくことで筋肉がより緩みやすくなることも理解していただけたかと思います。
ストレッチを行う時間はよく同じポーズで20秒〜40秒位と一般的に言われている様ですが、伸長反射を抑えながらゴルジ器官(腱紡錘)の機能を発揮するのには90秒〜120秒必要です。思っていたより長いと感じた方も多いと思いますがこのくらいゆっくり時間をかけてストレッチをやって初めて効果が現れるのです。
特に筋肉が硬くなって伸びにくい所は、1回で伸ばそうとせず何回かに分けて少しずつ根気よくストレッチする事をお勧めします。
ストレッチで柔軟性が出始めるのには個人差があります。誰かと柔軟性を競い合うのではなく自分に合ったペースで、痛みの出ない範囲で無理せずリラックスして、深呼吸しながら毎日欠かさず継続する事で必ず変化が起きてきます。
「継続は力なり」です。
市川秀彦